大判例

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仙台高等裁判所 昭和26年(ネ)91号 判決

控訴代理人は「原判決を取消す。油井村農地委員会が別紙目録記載の農地につき定めた買収計画を取消す。福島県農地委員会が右買収計画に関する控訴人の訴願を棄却した昭和二十五年二月七日附裁決を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人等の負担とする。」との判決を求め、被控訴人等代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は、

被控訴人等代理人において、

控訴人の主張事実中、油井村農地委員会が控訴人所有の別紙目録記載の農地につき自作農創設特別措置法の規定により、不在地主の農地として買収計画を樹立して昭和二十三年二月二十日これを公告したこと、控訴人が右買収計画につき油井村農地委員会に異議申立をなし、棄却されたので更に福島県農地委員会に訴願をしたが棄却され、その裁決書が控訴人主張の日に控訴人に送付されたこと、別紙目録記載の農地が元訴外斎藤丑蔵の所有であつたが、同訴外人はこれを訴外斎藤寅治に賃貸していたこと、控訴人が別紙目録記載の農地を控訴人主張の頃斎藤丑蔵から買受け、所有権移転登記を経由したこと、控訴人の住所がもと福島県安達郡渋川村にあつたが、控訴人主張の頃同郡油井村に転住し、その後更に渋川村に転住したことは認めるが、斎藤寅治が控訴人主張の頃控訴人に対し、昭和十九年の経過と同時に別紙目録記載の農地を返還する旨約した点は否認する。

と述べ、控訴代理人において、

本件買収計画が昭和二十年十一月二十三日現在の事実に基いて樹立されたことは認める。

と述べたほか、原判決事実摘示と同一であるから、こゝにこれを引用する。(証拠省略)

三、理  由

別紙目録記載の農地につき、油井村農地委員会が、自作農創設特別措置法の規定に従い、昭和二十年十一月二十三日現在の事実に基き、不在地主の所有農地として買収計画を樹立し、昭和二十三年二月二十日これを公告したこと、控訴人が右買収計画につき、油井村農地委員会に異議の申立をなし、棄却せられたこと、更に福島県農地委員会に訴願をなし、昭和二十五年二月七日棄却せられ、その裁決書が同年四月二十五日控訴人に送付されたこと、別紙目録記載の農地が元訴外斎藤丑蔵の所有で、同訴外人がこれを訴外斎藤寅治に賃貸していたこと、控訴人が別紙目録記載の農地を昭和十九年八、九月頃斎藤丑蔵から買受け、同年中所有権移転登記を経由したこと、控訴人の住所が元福島県安達郡渋川村にあつたが、昭和二十二年二月中に同郡油井村に転住したこと、その後昭和二十四年一月頃再び渋川村に転住したこと、以上の事実は当事者間に争がない。

よつて、本件の主たる争点である斎藤寅治が控訴人に対し、昭和十九年度限り右農地を返還することを約したかどうかの点につき判断するに、控訴人は右所有権取得により斎藤寅治に対する別紙目録記載の農地の賃貸人たる地位を承継したものといわねばならないのであるが、成立に争のない乙第一号証と当審証人斎藤寅治の証言を綜合すれば、訴外斎藤寅治は控訴人に対し控訴人が別紙目録記載の農地を買受けた当時は勿論その後においても右農地の返還を約した事実はなく、今日に至るまで引続き同訴外人においてこれを耕作している事実を認めることができる。右認定に反する当審証人斎藤丑蔵、佐藤憲治の各証言、及び当審における控訴本人尋問の結果は前記証拠に照し採用し得ない。

次に控訴人は、控訴人の渋川村の住所は油井村との境にあつて、物置の雨滴が油井村の地域に落下する状態にあるのであるから、不在地主ではないと主張するので按ずるに、当審証人斎藤丑蔵、佐藤憲治の証言及び当審における控訴本人尋問の結果に徴すれば、控訴人が昭和二十二年二月頃油井村に転住するまで住んでいた場所、即ち昭和二十年十一月二十三日当時の住所は現住の場所と同じで、建物も同じであること、控訴人は油井村の居住建物が昭和二十四年一月焼失したので再び前に住んでいた渋川村の建物に移転したものであること、そして渋川村の居住建物は油井村との境界線近くにあり、且控訴人の耕作している農地も全部油井村にあること、以上の事実が認められる。しかし、右基準当時の控訴人の住所が右に認定したように、油井村との境界に近い場所にあつたにせよ、それが渋川村に存する以上、いわゆる不在地主たるを免れないものといわざるを得ないからして控訴人の右主張も採用できない。

然らば、油井村農地委員会が別紙目録記載の農地につき、昭和二十年十一月二十三日現在の事実に基き、不在地主の小作地として樹立した買収計画及びこれを容認した福島県農地委員会の前記裁決はいずれも違法とはいえないから、控訴人の本件請求を棄却した原判決は相当であつて本件控訴は理由がない。

よつて、民事訴訟法第三百八十四条、第九十五条、第八十九条に則り主文のとおり判決する。

(裁判官 谷本仙一郎 豊川博雅 石井義彦)

(目録省略)

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